【2026年最新版】ベトナム最低賃金が改定|地域別の新基準(月額・時間給)と企業が知るべきポイント

ベトナム政府は、政令293/2025/NĐ-CPを公布し、2026年1月1日から適用される地域別最低賃金(月給・時給)を正式に改定しました。
夏に公表された草案と同じ内容で、今回の政令により正式決定となりました。

本記事では、地域Ⅰ〜Ⅳの新しい最低賃金額、適用ルール、工業団地・支店・新設区域に関する特別規定をわかりやすく整理します。

1. 2026年1月1日からの地域別最低賃金(新基準)

ベトナムの最低賃金は、物価・経済成長・労働市場の状況を反映した**地域別(4区分)**で設定されています。

政令293/2025/NĐ-CPの改定内容は以下の通りです。

【地域別最低賃金(2026年1月1日〜)】

地域月額最低賃金(VND)時間給(VND)
地域 I5,310,00025,500
地域 II4,730,00022,700
地域 III4,140,00020,000
地域 IV3,700,00017,800

地域 I が最も高く、ホーチミン市中心部・ハノイ中心区・主要経済都市が含まれます。
地域 III・IVは地方部が中心で、賃金水準は低めに設定されています。

2. 地域区分(I〜IV)は政令付録で詳細が示される

地域区分は政令と付属文書(付録)にて省・市・区レベルまで明確に記載されます。

例えば以下のような都市が含まれることが一般的です。

  • 地域 I:ホーチミン市中心区、ハノイ中心区、ビンズオンの一部など
  • 地域 II:郊外区、工業団地が集中する周辺都市
  • 地域 III:地方の中規模都市
  • 地域 IV:地方部・農村部

※正式なリストは政令293/2025/NĐ-CP付録に基づき確認が必要

3. 最低賃金の適用ルール|企業が注意すべき重要ポイント

最低賃金は「従業員の勤務地」を基準に適用されます。
多拠点展開の企業や工業団地内の企業は特に注意が必要です。

1. 基本ルール:事業所所在地の地域区分を適用

例:

  • 本社が地域 I にあっても
  • 工場が地域 III にあるなら、工場には地域 III の最低賃金を適用

勤務地ごとに異なる最低賃金を設定する必要があります。

2. 支店・工場・サテライトオフィスが複数ある場合

本社の地域区分を基準にせず、各拠点の所在地を基準に判断します。

  • ホーチミン(地域 I)本社
  • ドンナイ(地域 II)工場
  • カントー(地域 III)支店

→ 3拠点それぞれ別の最低賃金が適用される

3. 工業団地(KCN)、輸出加工区、ハイテクパーク

区域が複数の地域区分にまたがる場合:

もっとも高い地域の最低賃金を適用

例:

  • 工業団地の敷地が地域 II と地域 III にまたがる
    → 地域 II が適用される

これは企業が最も誤解しやすく、年に数回トラブルになるポイントです。

4. 行政区の名称変更・統合・分割があった場合

新しい政府規定が出るまでは、変更前の最低賃金区分を暫定適用します。

5. 新設区域が複数の地域を統合して誕生した場合

政府が正式に地域区分を指定するまで:

統合された地域のうち、最も高い水準の最低賃金を適用

例:

  • 地域 II と III の一部が統合して新しい区ができた
    → 地域 II を暫定適用

4. 最低賃金は「基本給」だけでなく手当に影響|企業が見落としがちな点

最低賃金改定は、以下にも影響します。

1. 基本給(給与テーブル)の見直し

基本給が最低賃金を下回る場合、必ず引き上げが必要。

2. 社会保険算定基礎

最低賃金を下限として算定するため、保険料も連動する可能性。

3. 残業代(OT)の基準額

最低賃金ベースの企業では、OT単価も上昇。

4. 採用コスト

地域 I・IIの事業所は採用単価が上がりやすく、求人難との相乗効果で人件費リスクが増大。

5. 日本企業・駐在員が知っておきたい2026年のポイント

人件費は確実に上昇する

地域 I(HCMC中心・ハノイ中心)は500万VND超えとなり、給与調整が不可避。

外資製造業はコスト圧力が強まる

産業集積地の多くが地域 II・IIIであり、工場全体の固定コストが増える傾向。

採用競争の激化

最低賃金上昇に伴い、企業間で給与水準が接近し、
福利厚生や働きやすさなど非給与要素の差別化が重要に。

ハイテクパーク・複数県にまたがるKCNは要注意

区域が複数の区分に跨る場合、最も高い地域の賃金を適用する義務がある点は特に重要。

6. まとめ:2026年のベトナムは「地域ごとの賃金最適化」が鍵に

2026年の最低賃金改定は、

  • 月額・時給が全地域で引き上げ
  • 多拠点企業は拠点ごとに異なる水準を適用
  • 工業団地・ハイテク区は最も高い区分を採用
  • 名称変更区域や新設区域は暫定措置あり

という複雑な運用ルールが特徴です。

企業にとってはコスト上昇が避けられない一方、
適切な仕組みを整えることで労務リスクを大幅に軽減できます。